大判例

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東京高等裁判所 昭和55年(う)1544号 判決

被告人 井村信太

〔抄 録〕

覚せい剤取締法は、その規定の形式に照らしても明らかなように、一般的禁止の形で各種の不作為義務を課し、その除外事由を極めて限定的に列挙しているのであるから、法定の除外事由の不存在は、同法違反罪の積極的犯罪構成要件要素ではなく、覚せい剤を自己使用し、所持し又はこれを譲り渡すという事実があれば直ちに同法違反罪を構成し、法定の除外事由があるということは、その犯罪の成立を阻却する事由であるにすぎないと解するのが相当である。一般にも、補強証拠の範囲は、必ずしも自白にかかる犯罪事実の全部にわたってもれなくこれを裏付けるものでなくても、自白にかかる事実の真実性を保障し得るものであれば足りるとされているのであって、本件のように犯罪の成立阻却事由にすぎない事実の存否について補強証拠を必要とすると解することのできないことは明らかである。道路交通法六四条、一一八条一項一号のいわゆる無免許運転の罪については、運転行為のみならず、同法所定の運転免許を受けていなかったという点についても、被告人の自白のほかに補強証拠の存在を必要とする、とするのが最高裁の判例であることは所論のとおりであるけれども、右の罪は、一般的禁止の形で人に対しておよそ車両を運転してはいけないという義務を課すものではなく、車両の運転が無免許である場合だけを禁圧する趣旨であるから、同法所定の運転免許を受けていないことを犯罪構成要件要素としていると解すべきであり、法定の除外事由の存在が犯罪の成立を阻却する事由であるにすぎない覚せい剤取締法違反の罪の場合を同一に扱うことのできないのは当然である。所論引用の判例は、事案を異にし、本件に適切ではないから、これを根拠とする所論は採用できない

(小林 寺沢 村田)

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